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2024.01.05

ベトナム経済概況【調査月報12月号掲載】

 

今、ベトナムの経済は高成長を続けています。経済成長率は2010年から平均して5~6%を維持しており、過去10年で一人当たりGDPは約2倍となっています。2020年~2021年は新型コロナ感染症の影響により成長率は伸び悩みましたが、それでも近隣諸国がマイナス成長の中、ASEAN内で最も高い成長率を記録してきました。コロナ禍では唯一ベトナムは東南アジアでプラス成長となっています。ベトナム政府によると、2023年のGDP成長率は6.5%に達すると見込んでおり、この目標達成に向けた様々な施策を行う方針であると発表しています。また、国際通貨基金IMFは、2025年におけるベトナムの国内総生産GDPを5,711億USD約77兆円とし、インドネシアとタイに次ぐ東南アジア諸国連合ASEANの3番手、GDP成長率は6.9%になると予想しています。また、コンサルティング会社PwCの調査レポートによると、ベトナムは2050年にかけて、年平均約5%で成長し、最も高成長を遂げる国となる可能性があると予想されています。

【経済成長率/1人あたりGDPの推移】

 

ベトナムは外資系企業の製造拠点として発展してきました。それまでは中国が世界中の企業の製造拠点として発展していましたが、人件費の向上や米中貿易摩擦など、様々なリスクを負うようになりました。そのため、中国以外の国に製造拠点を移す考えが広まっています。ベトナムは中国と陸続きであることや、3,000㎞を超える海岸線が海上物流を促進することと相まって、近隣のASEAN諸国と比べてもかなり優位な立地となっています。また、中国に比べて豊富で安価な労働力や多くの国との自由貿易協定を背景に、外国企業にとってリスク分散のための1国として特に人気を集めてきました。ベトナムの人口は約9,946万人であり、2024年には1億人を突破すると言われています。平均年齢は32歳と若く労働人口の88%近くが25~59歳となっています。ただ一方で、最低賃金は毎年6%程度上昇しており、人件費の高騰は今後のベトナム進出の課題の一つと言えます。

 

【ベトナムの最低法定賃金(2022年7月1日施行)】※南部のみ抜粋

ベトナム南部の最低法定賃金は地域によって4段階に区分さています。

地域1:468万ドン(約198米ドル)/月

地域2:416万ドン(約176米ドル)/月

地域3:364万ドン(約154米ドル)/月

地域4:325万ドン(約137米ドル)/月

 

【進出日系企業(製造業)の賃金各国比較】

 

近年では、平均所得の増加に伴う富裕層、中間層の増加により、消費市場としての大きな発展可能性が注目されています。地方の平均賃金はまだ低いため、しばらくは製造拠点と消費市場としての2面性を持っていますが、今後は消費市場としてもより成長していくことが見込まれると思います。

ベトナム消費者の拡大に伴い、日系小売企業のベトナム市場参入が相次いでいます。既にベトナムに進出している主要な日系小売企業としてはファミリーマート(2009年、ホーチミン市に初店舗を出店し、現時点までに数百店舗を展開)、ユニクロ(2019年、ベトナム1号店をホーチミン市に開店。2020年までに100店舗の出店を計画)、無印良品(2020年、ホーチミン市にベトナムでは初のポップアップ店をオープン)、マツモトキヨシ(2020年10月、ホーチミン市内にて1号店をオープン)などがあります。

 

【ベトナムに進出済みの主要日系小売大手企業】

店舗名 進出年 事業概要
ファミリーマート 2009年 ホーチミン市に初出店。現時点で130を超える店舗を展開
イオンモール 2014年 東南アジア初の大型商業施設をホーチミン市に開業
髙島屋 2016年 ホーチミン市に初店舗を開業
セブンイレブン 2017年 ホーチミン市に1号店を開店
ユニクロ 2019年 ホーチミン市に1号店を開店
無印良品 2020年 ホーチミン市に初のポップアップ店を開店
マツモトキヨシ 2020年 ホーチミン市に1号店を開店

これまで説明した通りベトナム市場には大きな魅力とポテンシャルを秘めておりますが、一方で課題も多くあります。以下はベトナム進出をご検討される際の主な課題となります。

 

【ベトナム進出の主な課題】

・原材料、部品などの現地調達率の低さ(ベトナム:37.3%、タイ:57.3%、中国:68.4%)

・法制度の不透明な運用や税制、税務、税関手続きの煩雑さ

・人件費の高騰(2022年の最低賃金上昇率は約6%)

・調達コストの上昇

・土地賃料の上昇

・インフラの未整備

・人材の確保、離職率の高さ(中間マネジメント層が薄く、比較的高賃金)

 

ベトナム進出後に顕在化しやすい問題点として、素材や原材料の現地調達率の低さがあります。製造加工を目的として進出したが、部材を国内調達しようにも、品質的に要望仕様を満たせる部材が現地で調達できないため、日本や他国などから輸入せざるを得なくなり進出前に計画していた採算性を維持することが困難になるという事例もあります。この点は製造業の産業発展において、中国とベトナムの大きな相違点です。中国に進出

した日系企業は70%程度の部材を中国国内で調達できるようになっています。その一方で、ベトナムは中国に代わる製造拠点として多くの海外企業が進出してきましたが、ベトナム国内企業に対する技術の展開などが進んでいないため、国内部材調達率が40%以下に留まっており、また、その調達率も実際にはベトナム国内に進出している海外メーカーから調達している割合も含まれているため、実際の現地調達率は20%程度とも言われています。

二つ目の課題として不透明な法規制があげられます。具体的な取扱が定められないまま、施行された法規則が数カ月後に停止するなどの事例もあり、進出企業が不明瞭に変化する法規則の対応に追われるなどの影響を受けることが多くあります。また、進出手続きを行う計画投資局や輸出入を管理する税関総局などによる、行政への申請や手続きの煩雑さも課題となっています。法律はあるが、実務や運用に関しては省市により異なりがあったり、同一省市の行政組織であっても、担当者により判断、運用が異なることも頻発しています。その上、行政に提出する資料類も多く、その準備や行政当局による承認が得られるまでにかなり時間がかかっているのが現状です。日本のようにスムーズに進むことの方が少ないと感じています。

 

最後に、このレポートでは、投資先としてのベトナム経済の魅力と課題についてご紹介いたしました。急速な経済発展が続くベトナムでは、市場環境の変化が激しく頻繁に法改正が行われています。業界構造も著しく変わる中、日本国内からアクセスできるベトナム市場の情報は現状では少なく、また取得した情報が信頼できる情報かどうか見定めなくてなりません。べトナム進出をご検討されるにあたっては、市場調査会社やコンサルティング会社に相談、サービスを利用することがメジャーな手段となります。普段から付き合いがある調査会社や、紹介を受けた会社など、選定状況は様々かと思いますが、是非最良のパートナー企業とともにベトナムビジネスに活路を見出していただければ幸いです。

以上

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