2025.07.19
ベトナムはこの10年間で、力強い経済成長を続けてきました。安定した成長率に加え、一人当たりGDPの着実な上昇、海外からの直接投資の増加、そして最低賃金の引き上げなど、さまざまな指標がその発展を裏付けています。本レポートでは、これらの主要な経済指標の推移をもとに、ベトナム経済の現状と今後の可能性について考察します。
【実質GDP経済成長率】
出所:IMF(国際通貨基金)データをもとに筆者作成。
※東南アジア;
インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー、ラオス、東ティモール
上記は、国内総生産の実質値に基づく前年比の経済成長率を表しています。直近10年間で毎年プラス成長を続けており、その成長率は東南アジア11か国合計と比較しても特に高い水準であることが分かります。また、コロナ禍の影響が大きかった2020年、2021年も東南アジアの中で唯一のプラス成長を維持しており、ベトナムが外的ショックに強い構造を持ち、回復力の高い経済を築いていることを示しています。製造業・輸出・FDIが成長の柱となっており、今後はサービス業やデジタル分野の拡大がさらなる成長を支えると期待されています。
続いて一人当たりGDPについて見てみましょう。
【一人当たりのGDP】
出所:IMF(国際通貨基金)データをもとに筆者作成
一人当たりのGDPは直近10年間で2,582USDから4,536USDと75%増加しました。一人当たりのGDPが4,500USDを超えると上位中所得国に分類されます。これは、過去10年以上にわたる安定した経済成長と輸出主導型産業構造の成果と言えます。ベトナム政府は2045年までに高所得国入りを目指しています。
続いて最低賃金の推移を見てみましょう。
【最低賃金の推移】
出所:ベトナム政令74号(74/2024/ND-CP)、政令38号(38/2022/ND-CP)、政令90号(90/2019/ND-CP)、政令157号(157/2018/ND-CP)、政令141号(141/2017/ ND-CP)、政令153号(153/2016/ND-CP),政令122号(122/2015/ND-CP)、政令103号(103/2014/ND−CP)
※本グラフは最低賃金が最も高い地域1(ハノイ市、ホーチミン市、ハイフォン市など)の数値をもとに作成。またその年に改定があった場合は新しい金額を採用。
最低賃金は2015年の約3,000千VND/月(約17千円)から2024年には約4,900千VND/月(約28千円)へと60%上昇しています。コロナ禍においても引き下げは行われず、労働者保護の姿勢が維持されました。年平均では約6~7%の上昇率を維持しており、最低賃金の段階的な引き上げは、労働者の購買力を支えると同時に、社会的安定にも寄与してきました。今後も段階的な引上げが予想され、ベトナムへ新規進出をご検討の際には、賃金の増加率を考慮する必要があると言えます。
最後に海外からの投資状況を見てみましょう。
【海外直接投資(FDI)の推移】
出所:ベトナム計画投資省のデータをもとに筆者作成。
この10年間、ベトナムは海外からの直接投資(FDI)を着実に拡大し、ASEAN地域における有力な投資先としての地位を確立してきました。2015年には220億ドルだったFDI額は、2024年には336億ドルに達し、約1.5倍に増加しています。
この成長の背景には、自由貿易協定(FTA)の積極的な活用、安定した政治・経済環境、そしてインフラ整備の進展といった複数の要因があります。特に2018年以降は、米中貿易摩擦の影響で中国からの生産移転が進み、ベトナムが「中国+1」戦略の主要な受け皿として注目されました。
一方で、2020年には新型コロナウイルスの影響によりFDIが一時的に減少しましたが、ベトナムは感染抑制と経済再開の両立に成功し、2021年以降は再び投資が回復。2025年には上半期だけで117億ドルを超えるFDIを集めており、年間では過去最高を更新する見通しです。
今回のレポートでは、主要な指標をもとにベトナム10年間の成長を見てきました。しかし、ベトナムが今後も持続的な経済成長を遂げるためには、いくつかの重要な課題に取り組む必要があります。制度の透明性、地域間のインフラ格差、高度人材の育成、そして環境・社会・ガバナンス(ESG)への対応といった課題も残されています。これらの課題を克服していくことで、ベトナムは単なる製造拠点を超えた、戦略的な投資先としてさらに発展する可能性を秘めています。