2025.01.20
2024年12月22日、ベトナム・ホーチミン市に初の都市鉄道(メトロ)が開通しました。これはJICA(国際協力機構)による円借款事業によって整備されたものです。今回のレポートでは、日本の技術が数多く取り入れられた都市鉄道についてご紹介します。
【事業概要】
ベトナムは経済成長とともに都市部の人口が急増し、慢性的な交通渋滞と排気ガスによる大気汚染が問題視されてきました。今回の都市鉄道の開通は、ホーチミン都市圏におけるそれらの問題解消と、地域経済の発展に寄与することが期待されています。都市鉄道1号線は、ホーチミン市中心部のベンタイン駅と大型バスターミナルのあるスオイティエン駅を結んでいます。
本事業の円借款には本邦技術活用条件(STEP)が適用され、整備される地下区間、車両、ITシステム等には日本の鉄道土木工事や車両・電気・通信・信号システム、維持管理等の技術が活用されています。
当初計画では2018年の完成を予定しておりましたが、資金難をはじめとする様々な要因により、工期は6年以上遅れることになりました。日本からのODAにより資金の大半が賄われる予定でしたが、当初予算計画が正確でなかったことや経済発展による賃金上昇を予測していなかったことが原因で、総工費は当初計画を大幅に上回りました。そのため、資金繰りに窮したベトナム政府は支払を遅延させたため、工事が一時中断する事態も発生しました。工事関与した日系企業にとっては苦い経験となりなりました。
初めて自国の都市鉄道に乗り、車窓から景色を眺める若者たちの熱い視線は、経済発展を続けるベトナムを象徴していると感じました。しかし、1,000万人規模の大都市では都市鉄道が1路線開通しただけでは、慢性的な交通渋滞は大きく改善しません。今後、全8路線にまで増えていく予定ですが、大幅遅延した1号線の教訓を活かして、計画的に開発されることを期待しています。