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2025.10.15

ベトナム不動産市場の現状と展望

1.ベトナム不動産市場の重要性

ベトナムの建設・不動産部門は、2024年のGDPに占める割合が9.4%。製造業、農林水産業、小売・卸売業に次ぐ第4位で、経済成長を支える主要産業です。
都市化の進展やインフラ整備、住宅需要の増加を背景に、オフィスビルや商業施設、住宅開発が活発化しています。また、海外からの直接投資(FDI)においても不動産分野は製造業に次ぐ規模を誇り、国際資本の流入が市場の成長を後押ししています。
今後も人口増加と所得向上に伴い、住宅・都市開発の需要はさらに拡大する見込みであり、ベトナム経済における不動産市場の重要性は一層高まると考えられます。

<2024年事業別GDP構成比>

出所:ベトナム統計総局(GSO)のHPより筆者作成。

2.ベトナムの不動産市況

2007年のWTO加盟以降、外資流入を背景にベトナムの不動産市場は急成長しました。一方で、バブル抑制のための金融引き締めや開発許可の厳格化により、市況は好調と低迷を繰り返してきました。

近年では、新型コロナウイルスの影響でプロジェクトの遅延や経済の不透明感から市場は低迷しましたが、政府の景気支援策として政策金利が段階的に引き下げられ、不動産業界を下支えしました。しかし、2022年に一部大手企業の不正社債問題が発覚し、資金調達の厳格化や中央銀行の利上げによりディベロッパーの資金繰りが悪化。開発プロジェクトの中断や事業者のデフォルトが発生し、市場は再び厳しい局面を迎えました。

現在は、事態の鎮静化と政策金利の引き下げによる需要回復が進み、信用残高の増加からも市場は再び成長局面にあるといえます。

出所:(左)ベトナム国家銀行のHPより筆者作成  (右)ベトナム建設省のHPより筆者作成

3.住宅用不動産の需要動向

ハノイとホーチミンの2大都市では、経済成長と都市化の進展により住宅需要が急速に拡大しています。2004年から2024年の20年間で両都市の人口は約2倍に増加し、全国人口に占める割合も11.1% → 18.0%に上昇しました。これは、都市部への集中が加速していることを示しています。

この背景から、コンドミニアムの新規供給・販売は長期的に堅調に推移してきました。しかし、2022年後半の不動産業界の低迷により、2023年は供給・販売ともに大幅減少。それでも2024年には再び大きく回復し、市場の底堅さが確認されています。

<価格動向と課題>

新築販売価格は、物価上昇や供給不足を背景に上昇傾向が続いています。特に高価格帯物件の供給が多く、中間所得層が求める手頃な住宅との間にミスマッチが生じており、ホーチミンでその影響が顕著です。この課題は、住宅市場の持続的成長に向けて解決すべき重要なポイントです。

<将来性>

都市部人口は今後も増加が予想され、住宅需要は引き続き高水準を維持すると考えられます。価格高騰と供給不足の課題を解決し、安定的な物件供給が実現すれば、住宅用不動産市場はさらに拡大する可能性があります。

出所:ベトナム統計総局より筆者作成

出所:不動産コンサル会社「CBRE」の情報をもとに筆者作成

4.海外からの不動産投資の動向

ベトナムの不動産市場の成長には、海外からの投資が非常に大きな役割を果たしています。特に、都市化の進展や経済成長を背景に、オフィスビル、住宅、商業施設、工業団地など幅広い分野で外資系企業によるプロジェクトが増加しています。

ベトナム計画投資省のデータによると、2015年~2024年の10年間で不動産分野への海外投資は、コロナ禍や業界不況による一時的な低迷を経ながらも、全体として増加傾向を示しています。特に直近2024年の対内直接投資では、不動産業への投資額は以下の通りです:

・直接投資(新規・追加):135件、約 50億9,100万USD

・出資・株式取得:83件、約 12億1,800万USD

合計では製造業に次ぐ第2位の規模となり、不動産分野が海外投資の主要な受け皿であることがわかります。

<背景と特徴>

・大規模プロジェクトの有無で投資額は変動するものの、長期的には増加傾向。

・投資対象は住宅開発だけでなく、オフィス、ホテル、物流施設、工業団地など多様化。

・日本、韓国、シンガポール、中国などアジア諸国からの投資が中心。

<今後の展望>
都市化の加速、インフラ整備、経済成長を背景に、海外資本の流入は今後も続くと予想されます。特に、ベトナム政府が不動産市場の透明性向上や法制度整備を進めていることから、外資系企業にとって投資環境はさらに魅力的になると考えられます。

出所:ベトナム計画投資省のHPより筆者作成。

※2016年より出資・株式取得による投資額の実績を公表しており、2015年実績は不明。

出所:ベトナム計画投資省より筆者作成。

5.日本企業によるベトナム不動産投資

日本企業は、ベトナムの不動産市場において重要な役割を果たしています。大手企業を中心に、オフィスビル、ホテル、工業団地、物流施設、住宅や商業施設を含む都市開発など、幅広い分野で投資・開発を行っています。

日本企業は品質・安全性・環境配慮を重視した開発で高い評価を得ており、現地市場での信頼性が強みであり、長期的な視点での都市開発や住宅供給に取り組み、持続可能な街づくりを推進しています。

ハノイ・ホーチミンでの高級住宅・コンドミニアム開発大規模複合都市開発(住宅+商業施設+公共スペース)工業団地・物流拠点の整備による製造業支援ホテル・オフィスビル開発によるビジネス環境の強化などを行っています。

ベトナムの経済成長と都市化の進展により、日本企業の不動産投資はさらに拡大する見込みです。特に、環境に配慮したスマートシティ開発や中間所得層向け住宅供給など、新たなニーズに対応するプロジェクトが増加すると予想されます。

<日系企業の不動産開発事例>

場所 概要
2012年 ビンズン省 現地ディベロッパーと共同の新都市開発。約1,000haのエリアにマンション、複合商業施設を開発
2018年 ハノイ市 現地ディベロッパーと共同で全5期にわたる大規模スマートシティ開発を進行中。第1期・第2期では住宅を中心に、高層マンション:16棟、戸建住宅:約400戸、学校などの公共施設建設を計画。第1期の居住人口は約 3万人を想定。
2020年 ホーチミン市 現地ディベロッパーが進める大規模都市開発において、日系商社と不動産会社が分譲事業のメジャーシェア80%を取得し、第2期開発に参画。第開発面積26ha、1万戸超の分譲住宅、総事業費:約1,000億円を計画。
2024年 ビンズン省 現地ディベロッパーと共同で、約 41ヘクタールの敷地における大規模タウンシップ開発を進行中。低層分譲住宅:約 1,200戸、高層分譲住宅:約 5,500戸、総事業費:約 1,400億円、完成予定:2034年を計画。

 

6.最後に

ベトナムの不動産市場は、経済成長を支える重要な産業であり、都市化の進展や人口増加を背景に、住宅・商業施設・オフィスなど幅広い分野で需要が拡大しています。過去には金融引き締めや不正問題、コロナ禍による低迷など課題もありましたが、現在は政策金利の引き下げや信用残高の増加を受け、再び成長局面にあります。

住宅市場では、ハノイ・ホーチミンを中心に人口増加に伴う需要が高まる一方、価格上昇や中間層向け物件不足といった課題も顕在化しています。こうした課題を解決し、安定的な供給体制を構築できれば、さらなる市場拡大が期待されます。

また、海外からの投資は不動産分野で製造業に次ぐ規模を誇り、日本企業を含む外資系企業の参入が市場成長を牽引しています。特に、日本企業は品質・信頼性を強みに、スマートシティや大規模都市開発など持続可能なプロジェクトを推進しており、今後もベトナムの都市インフラ整備と生活水準向上に大きく貢献することが見込まれます。

総じて、ベトナム不動産市場は中長期的に高い成長ポテンシャルを有しており、海外投資と現地開発の連携が今後の市場拡大の鍵となります。

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