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2025.05.20

ベトナムの貿易状況と米国相互関税について

 

米国のトランプ第2次政権が発足して100日が経過しました。その中で「相互関税」という全世界を巻き込む大きなニュースが発表され、ベトナムに対しては「46%」という非常に高い税率が示されています。ひとまず90日間の停止措置期間が設けられていますが、今後どのうように進んでいくか不透明な状況が続いています。今回は、ベトナムの貿易状況について紹介し、なぜ高い税率が示されているかについて説明いたします。

 

国別の輸出入の状況

ベトナム統計総局によれば、2024年の輸出額は405,532百万ドルでした。国別にみると最大の輸出相手国は米国で119,501百万ドル(全体比29.5%)、次いで中国が61,212百万ドル(同15.1%)となっています。日本は第4位の輸出相手国で24,608百万ドル(同6.1%)となっています。

 

2024年の輸入額は380,764百万米ドルでした。国別にみると最大の輸入相手国は中国で144,021百万米ドル(全体比37.8%)で、次いで韓国が55,926百万ドル(同14.7%)となっています。日本は第4位で21,588百万米ドル(同5.7%)、米国は第5位で15,103百万米ドル(同4.0%)となっています。

 

2024年のベトナムの貿易収支は24,768百万ドルの黒字です。国別にみると、対米貿易は104,398百万ドルの黒字、対中貿易は82,809百万ドルの赤字となっており、いずれも最大の貿易黒字国、貿易赤字国です。日本は輸出・輸入ともに第4位の相手国であり、貿易収支は3,020百万ドルの黒字となっています。

 

品目別輸出入の状況

主要輸出品目は、1位からコンピュータ電子製品・同部品(全体比17.9%)、電話機・同部品(同13.3%)、機械設備・同部品(同12.9%)、縫製品(同9.1%)、履物(同5.6%)となっています。

 

主要輸入品目は、1位からコンピュータ電子製品・同部品(全体比28.1%)、機械設備・同部品(同12.8%)、織布・生地(同3.9%)、鉄鋼(同3.3%)、プラスチック原料(同3.1%)となっています。

 

輸出・輸入ともに、コンピュータ電子製品や機械設備が上位となっています。これはベトナム国内に大規模な組み立て工場があり、部品を輸入しベトナムで加工して製品化した後に輸出しているためです。また、電話機・部品の輸出が多いのは、韓国最大手のSAMSUNGやLG、アップル関連を製造しているFOXCONN(鴻海)など、外資企業が主導となった大型工場があることが要因と考えられます。

ベトナムでは一般的に原材料や部品等を輸入し、ベトナム国内で加工・製品化したものを輸出する加工貿易を得意としています。

 

米国がベトナムに対して相互関税「46%」という高い税率を示す理由として、以下の2つがあります。

1つ目は対米貿易が大幅な黒字であるためです。ベトナムの最大の輸出相手国は米国であり、貿易黒字は104,398百万米ドルになります。一方で米国にとってベトナムは、中国、メキシコに次いで3番目に大きな貿易赤字国となっています。トランプ政権とすれば米国の貿易収支を是正するために、ベトナムに対して高い税率を示していると考えられます。

2つ目はベトナムが中国製品の迂回輸出の拠点となっている可能性を米国政府は疑っているためです。実際に直近10年間で対米輸出額の増加に伴い対中輸入額も増加しています。中国から原材料を調達しベトナムで加工した後に、米国に輸出するのは一般的な貿易ルートですが、それに紛れて中国が関税回避のために自国製品を迂回させているという疑念があります。

 

ベトナムにとって米国は最大の輸出相手国かつ貿易黒字国です。今回の相互関税措置が発動された場合、国内経済への影響は非常に大きいと考えられています。ベトナム政府は最悪の事態を回避するために、早い段階から米国との交渉を進めています。しかしベトナム国内ではGDP成長率の下押しや外資系企業の撤退懸念、発動前の駆け込み輸出増加など様々なニュースが日々報道されており、不透明な状況が続いています。今後も事態の変化を注視していく必要があります。

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