
2025.11.20
ベトナム政府は11月10日、最低賃金に関する政令293号(293/2025/ND-CP)を公布し、地域別に設定している最低賃金(月額および時間給)を改定しました。最低賃金の改定は2024年7月1日以来1年半ぶりの改定となり、2026年1月1日より適用されます。
国家賃金評議会(政・労・使+専門家)の協議を経て、社会経済状況・物価動向・労働者の生活水準を踏まえた改革として改定を実施しました。今回の水準は、労働者の最低生活保障と企業の雇用維持のバランスを重視した内容となっています。
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地域 |
最低賃金(月額) |
最低賃金(時間給) |
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地域Ⅰ |
5,310,000 VND |
25,500 VND |
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地域Ⅱ |
4,730,000 VND |
22,700 VND |
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地域Ⅲ |
4,140,000 VND |
20,000 VND |
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地域Ⅳ |
3,700,000 VND |
17,800 VND |
1.適用基準
原則として、雇用主(使用者)が事業活動を行う所在地の地域区分に応じた最低賃金水準を適用します。
2.支店・事業所
雇用主が複数の単位(支店・事業所)を有する場合、各単位の所在地ごとに該当地域の水準を適用します。
3.工業団地(KCN)・経済区(EZ)・ハイテク/デジタル集中区
複数地域にまたがる場合は、最も高い地域水準を適用します。
4.区域の名称変更・分割
政府による新規定が公布されるまで、従前の地域区分を暫定適用します。
5.新設区域
複数区域から新設された場合は、最高水準を暫定適用(政府の新規定まで)。
6.減額回避の経過措置
区域見直しにより付表の地域水準が2025年12月31日時点より下がる場合、同日以前に採用済みの労働者については従前水準を継続します。
7.賃金形態の換算
時間給・日給・週給・出来高払いの場合も、換算した金額が最低賃金を下回らないことが必要です。
※地域区分(都省・区郡・坊社の具体一覧)は政令の付表PDFで公表されています。
1.賃金テーブル・契約の見直し:2026年1月以降、基本給が地域別最低水準を下回らないように更新
2.複数支店拠点の確認:各所在地の地域区分を再確認し、最も高い対応地域の最低賃金を設定
3.各種手当の構成調整:基本給が最低水準を下回らないよう、手当構成の調整が必要
4.給与システムの更新:給与計算のマスターデータ・手当設定の更新
5.雇用契約・就業規則の改定:2026年1月1日付での施行に向け、規定類の整備を推進
6.従業員への周知徹底:改定内容・実務処理方法等について、社内掲示・通知文・研修等により周知
7.社会保険等の再計算:保険料算定基礎等に影響が出るため再計算が必要
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地域 |
現行 |
2026年1月1日適用 |
引上げ率 |
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月額 |
時間単価 |
月額 |
時間単価 |
月額 |
時間単価 |
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地域Ⅰ |
4,960,000 VND |
23,800 VND |
5,310,000 VND |
25,500 VND |
7.06% |
7.14% |
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地域Ⅱ |
4,410,000 VND |
21,200 VND |
4,730,000 VND |
22,700 VND |
7.26% |
7.08% |
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地域Ⅲ |
3,860,000 VND |
18,600 VND |
4,140,000 VND |
20,000 VND |
7.25% |
7.53% |
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地域Ⅳ |
3,450,000 VND |
16,600 VND |
3,700,000 VND |
17,800 VND |
7.25% |
7.23% |
平均上昇率は約7.2%
今回の最低賃金改定は、単なる数字の変更にとどまらず、ベトナムの経済成長と労働市場の変化を象徴する重要な動きです。企業にとっては人件費の増加という課題がある一方で、労働者の生活水準向上や社会安定に寄与する前向きな改革でもあります。
この変化を「コスト増」として捉えるだけでなく、人材確保・定着の強化、企業ブランド価値の向上、持続可能な経営への投資と位置づけることが、今後の競争力を左右します。
2026年は、ベトナム市場における企業の責任と機会がより鮮明になる年です。ぜひこの改定を契機に、労務管理の見直しとともに従業員との信頼関係を深める取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。